永い言い訳

 

 

『永い言い訳』という小説は、私がここ数年の間に読んだなかでベスト3に入るくらいのお気に入りで、その少しあとに映画化を知って楽しみにしていたのですが、観る機会のないままあっというまに3年経ってしまった...けど、先日やっと映画を観ることができました。映画もやっぱりよかったー!

突然の事故で妻を失った男が、妻の死を受け入れるまでの、永い永い心の旅。知人の子どもたちと触れ合うなかでゆるやかに変わっていき、妻の死を受け入れて歩き出せるようになる。文字にしてしまうととてもありふれた筋書のようだけど、そこに至るまでの過程がはっとするほどリアリティに満ちていて、原作を読んでる間中、ずっと、こんな物語を書ける人はどんな人なんだろう?と思ってた。これほど広い視点をもてないと、映画を撮ったりする人にはなれないんだな、と。

主人公の幸夫は、「子供の王様」と自分で言い切るほど、自己中で独善的でナルシスト。彼の、子どもに慣れてなさからくる苛立ちとか、子どもとの距離の取り方のぎこちなさがとてもリアル。でも、子どものいる生活のディテールにも、11歳の真平・5歳の灯、それぞれの子どもたちの心理描写にも同じくらいリアリティがある。ふたりの父親・陽一は、わかりやすいキャラクターに落とし込まれているんだけど、そのぶん安定感があって、粗野で直情的でありながら、人間的な美しさがにじみ出て来るように描かれていてそちらも見事。

 

大好きな小説が映画化されると、うれしい反面、どうしてもびみょうな齟齬に胸がざわついてしまいかねないものですが、小説書いた本人が映画を作っているんだったら、安心して観られるよね! キャストのバランスも完璧でした。

小説には書かれていなかったものが映像で感じられるようになっていたり、またその逆もあったりで、小説では小説のよさ、映像では映像のよさが楽しめるなあとおもいました。3次元になった幸夫くんは文字で読んでた以上に薄っぺらかったしクズだったし。エゴサーチしてるときの目とかほんと最高です。鳥肌だよ。

 

西川美和さんは、あの是枝監督のお弟子さんだったのですね。
小説でもふたりの子どもたちがいきいきと描かれていてとても良かったんだけれど、映像になったらさらに良くて、全然演技してるように見えなくて、もう、このふたりが出ているだけで涙出ます。喧嘩のシーンとか可愛すぎて反射的に涙がふきだしました。このふたりを観るだけでも充分おつりがきそう。

全体が良かっただけにラストのシーンがちょっと物足りない気もして、どちらもよかったけれど、この物語全部が幸夫の「永い言い訳」だった、という感じが残ったのは、小説のほうかな。
私はそういうのによわいので、やっぱり小説がすき。また読みたくなってしまった。

 

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