岩井俊二とスワロウテイル

私はもうすぐ40さいになるんですけど、人生の半分くらいまできたから、そのせいなのかなんなのか、この1年くらい、若い頃に夢中だったものをもう一度見てみたい、読んでみたい、というムーブメントが来ています。『きらきらひかる』「十二人の優しい日本人」もそのいっかんです(笑)。


そしてずっとずっと岩井俊二が見たいなあとおもっていたところ、なんとGYAOで「スワロウテイル」がやっていたのです! 20年ぶりくらいのスワロウテイル!

私が思うスワロウテイルの見どころは

 

1.壮大な法螺話感

架空の都市「円都(イエンタウン)」に暮らす、アンダーグラウンドでハングリーな移民「円盗(イエンタウン)」たち、という設定だけでなんだかもうすごい。殺された組員のお腹のなかから怪しいカセットテープが出てくるし、それをめぐって中国マフィアまで入り乱れての大乱闘。それとは別に存在する謎の凄腕スナイパーたち。
そして円盗たちの住んでるスラム街に、もうこれ絶対日本じゃない阿片街。ランドセルに偽札を詰め込む小学生たち。燃やされる札束。何がなんだか。

ツッコミどころもあるにはあるし、こういう絵がただ撮りたかったんだろうなーというのがうっすら感じられたりもするのですが、それもまた岩井俊二らしさ。大規模な悪ふざけ/壮大な法螺話を、大勢の大人たちが本気になって才能とお金をつぎ込んで実現させちゃったんだなあ!というところに、この映画の夢のような素晴らしさがある。

2. Charaが歌うシーン

吉本ばななの小説に、相手のフォトジェニックさを表現するのに、「Charaというひとに似ていた」と書いてあるところがありました。なんの作品だったかは忘れちゃったけど、すごいわかる!っておもったからよく覚えてる。もともとそんな雰囲気のCharaだけど、岩井俊二がオシャレ〜な感じに撮るから、本当になんていうかもう、芸術品の域です。
スワロウテイルではCharaがいっぱい歌います。バンド初結成時の、「マイウェイ」をうたうシーンはまるでミュージックビデオのよう。他にもライブのシーンとかもたくさんあって、ちょっとまあ、長いといえば長い気もするんですが、もともとMV撮っていた岩井さんらしく、カッコよくてしびれます。演技もふくめ独特な存在感があって、「女優じゃなさ」が絶妙。

3.少女アゲハの成長譚

グリコに拾われ、初めて名前をもらったアゲハ。大人になりかけの少女特有のたたずまいと、芯のつよさを感じさせる表情がとても魅力的な女の子です。グリコの恋人・フェイホンへのほのかな恋心は、自分でもそれと認識できてないのかもしれないけど。
冒頭でグリコに描いてもらった胸元の芋虫が、本物の蝶に変わるシーンは、通過儀礼としてのタトゥーというものをつよく感じさせて象徴的。不在のグリコに替わって、自分がフェイホンを助けようとする決意に泣けます。

4.音楽は夢

一財産をなし、買い取ったお店をキャバクラにすべきと言い張るグリコと不動産屋に対して、「そんな生活とはおさらばするんだ」と、ライブハウスを作ろうとするフェイホン。グリコの歌姫としての成功が、フェイホンにとっての夢なんですね。
円盗である彼らにとっての夢が、他の何でもなく音楽であるというのも、私がこの作品をすきな要素なんだとおもう。純粋で可愛い夢。
釈放された帰り道に、フェイホンがスワロウテイルの看板を見上げるシーンの美しさといったら。偽札でつかんだ夢のはかなさを象徴しているのかな。

ちなみに、フェイホンを演じている三上博史は奇跡のような美しさ。そしてどう見ても三上博史なんだけど、本当に、日本人にはまったく見えないのです。演技力!


岩井さんの映画は、その当時から、映像がきれいなだけ、雰囲気だけ、中身がない...などとよく揶揄されていたけれど、私はそれが全然意味わかんないとおもってた。今回ふたたび見てみて、もしかしたらそう感じるのかなとおもったけど、やっぱり内容がないとは思わなかったですね。
これで内容がないって言ったら、邦画のほとんどは内容ないのでは...←暴言。

私は昔から映画のグロいシーンがほんとうに苦手なのですが、それでも何度も繰り返し見たいとおもったのは、この映画がきちんと清濁併せのんでいると思ってたから。気持ち悪いシーンあってこそ際立つ、フェイホンの、グリコの、アゲハの夢の美しさ。
 

「ラブレター」からはじまり、「undo」「PicNic」「打ち上げ花火・・・」、「ルナティックラブ」にまでさかのぼって豊川悦司のヤバさに興奮し、「Ghost soup」のほんわかしたストーリーも可愛くて。もう何も手元には残っていないけど、こうして書いてるだけでときめいてしまいます、いまも。
そしてその集大成のように存在する「スワロウテイル」。
「むかしむかし、円が世界で一番強かった時代」という語りではじまるこんな作品、もう絶対この先作られることはないんだろうな〜と。
はじめて劇場で見たときは立ち見でした。映画館で立ち見っていまでもあるのかな?! 懐かしい思い出です!

 

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